襲撃を受け一端、外に逃げたベリルが死体の転がる施設に再び足を踏み入れたとき、いくつかの部屋が焼け落ちていた事を確認した。

 情報を奪われないための措置が施されていたのだろう。

 防火設備が整えられた施設は、指定の部屋を完全に消失させるに実に役立ってくれたらしい。

 ベリルは施設にいた三百人、全ての人間の名を覚えている。

 別れは、庭に咲いていた花を一つ、一つと添えていく。

 ここには戻らないという決意と、何も解らずに死んでいった人々への哀しみと──襲撃した連中が戻ってくるかもしれないという恐怖はあったが、どうしてもそれだけはして行きたかった。

 何故、私だけが成功したのか。どうして生まれたのか。

 そんな事は解らないし、知ろうとも思わない。

 誰がどんな理由をまくしたてようとも、己の意志が現実なのだ。