顔を伏せたベリルを見やり、カイルはおもむろにその頭にチョップを繰り出した。

 ベリルは突然の痛みに頭を押さえて眉を寄せ、無言でカイルを見つめる。

「無駄に悩むな」

「無駄ですか」

「お前はあいつらのこと、忘れないだろ」

「はい」

「じゃあ、それで充分だ」

 お前があいつらのために悲しんだなら、それだけであいつらの生きていた証だ。

「誰かが誰かのために涙を流しているなら」

 それだけで、この世は捨てたもんじゃない。

「カイルー! 洗濯物あったら出しといてー!」

「もう全部出した!」

 張り上げた少年の声にカイルも同じく声を張る。

「ラシードはどうです」

「おう。元気すぎて参るぜ」

 彼はいま、十二歳の少年と暮らしている。

 一年ほど前にベリルが中東で救い出した子どもの一人だ。