──アメリカ合衆国、ノースカロライナ州フェイエットビル。

「軍人家族にとっての世界初の聖域」を二〇〇八年に宣言した町だ。

 フェイエットビルは、アメリカ独立戦争のときにアメリカ大陸軍と共に戦ったフランス軍人ラファイエット将軍の名に因んで付けられた最初の町である。

 愛称の一つにミリタリータウンがあるのも頷ける。

 ベリルは一人前になるまではと、カイルの勧めでここフェイエットビルにある彼の自宅に同居している。

 それに、最もありがたがっているのはカイル自身ではあるのだが、家事全般をこなしてくれているベリルには頭が上がらない。

 ベリルの名もそれなりに広まり始め、仕事も安定してきた。

 これから増えてくるであろう要請の前に、兼ねてからの一人旅を実行するためベリルはボストンバッグを肩に立ち上がる。