「あの……長畑さん。
1つ聞いてもいいですか?」
重苦しい空気の中で口を開いたのは七海だった
「何?七海ちゃん」
いつものように接してあるけど、長畑さんの瞳は戸惑うようにゆらゆらと揺れていた
「冬香さんの本当のお父さんの職業ってわかりますか?」
予想外の質問だったのか、長畑さんは目を丸くさせた
「いえ……なにも聞いてないわ
お父さんは生まれてすぐにいなくなったことしか……」
「いなくなった?離婚てことか?」
怪訝な顔を浮かべた勇斗は後ろから顔をつき出す
「離婚じゃないわ
確か籍をいれていなかったっていってたから。
冬香もまさかこんなことになるなんて想像してなかったから、父親の職業なんて……」
「てことは遠藤って名字は母方の名字で間違いないですよね?
じゃあさらちゃんのお父さんの名字はわかりますか?」
まるで七海が長畑さんを事情聴取しているような光景だった
「そうね……孤児院に来たときにはすでに遠藤だったし……
……あ。そういえば!!
そうよっ、確か前の名字は宮下って言ってたわ!!」
「宮下、ですか。
ちょっと待ってください」


