消毒液が充満した病院の中を進むと、病院には場違いな華やかな格好をした人たちが目に入る。
「由比、どうかしたの?」
顔をあげた七海が心配そうに眉をさげる。
「ううん、なんでもない。」
あえてさっきのことを口にしようとは思わなかった。
たとえあの声が本物だろうが幻聴だろうが、確実にあたしを挑発する言い方だ。
そしてあの声はおそらく冬香ちゃん……。
絶対に見つけてやる。
その時、ワイシャツの第2ボタンまで外した陵が出てきた。
腕の辺りに包帯を巻いているのがワイシャツ越しにうっすらと確認できる。
「あれ、先に戻っててよかったのに。」
みんなが待っていたのが予想外だったのか、陵は目を丸くさせて驚いていた。
「ドアホ。んなことできるわけないやろ。」
「ケガの具合もわからねーのに送るだけ送って、あとはよろしくはないだろ?」
勇斗とまさ兄があきれたように声をだす。
「とにかく、その様子ならあまり心配しなくても大丈夫なのね?」
長畑さんが確認をとる。
「はい、特に生活には支障はでないみたいです。
ただ、激しい運動と風呂に入るときは気を付けるように言われました。
また傷口が開く可能性があるみたいで……
心配かけてすいませんでした。」
陵はそう言って深々と頭をさげた。
「無事で何よりよ。
学校まで送っていくわ。」
ニッコリと笑う長畑さんは車のキーをポケットから取り出す。


