その時、フッと甘い香りが鼻をくすぐった。
何の匂いだろ……花かな?
匂いの招待はきれいな女の人だった。
うち巻きで巻いた長い髪を揺らせて、高いヒールをカツカツと軽快な音を立てて優雅に歩く。
「キレーなひと……」
思わず見とれてしまったのはあたしだけではないようだ?
陵もその人の方をジッとみている。
「いいなあ……あんな人になれたらきっと人生楽しいだろうな……」
「……楽しいならなんで持ってるんだ?」
「は?何いってんの?」
陵はその質問に答えず、その人のあとを早足でおう。
「ちょっと陵!!まっ「そっから動くな!!」
え……?
険しい表情はいつにもまして怖い……
「ぜってー動くな。わかったな。」
肩をガッと掴まれたあたしはぎこちなく首を縦にふった。


