***千代子SIDE***


慎一さんに言えなかった…。ゆうちゃんの事。
自分で解決しなきゃいけないから。


私はゆうちゃんの家の前に立ち、インターホンに指を伸ばした。


―ピーンポーン…。


押すまでに10秒躊躇った。しばらくして、ゆうちゃんが門まで出てきた。


「千代子。なに?話って…って、あの事だよね?」


「…うん。」


「悪いけど、聞く気ないから。」


「す…っ、好きな人がいるの!」


そう言って、私はポケットから、慎一さんの写真をとり出した。


「…これが、その彼?」


「そう!この世で一番、かっこいいんだから!」


「…この人。」


…?知ってるの?


「おっ!千代子」


…し、慎一さん??


「ちょっとそこまで通ったから来てん。…あれ、お前…どっかで…」


慎一さんはゆうちゃんを見て何か難しい顔をした。会った事はあるけど、誰か思い出せないみたい。


「もしかして…慎一さんですか?」


「そうやけど……、あ!思い出した!慎二と修司のダチやろ?」


…え?慎二くんと修司の?


「そうですけど…、まさか千代子の彼氏だったなんて…千代子、お前…大丈夫か?」
「何が?」


「…千代子は、Mなのか。」


ゆうちゃんはボソリと呟いて、家の方に入っていった。


「…えっ!?ゆうちゃん。」


「あいつが“ゆうちゃん”か…。昔、ようイジメたなー。」


「え…。慎一さん、ゆうちゃんまでも…」


「そうそう。アイツん家、金持ちやろ?親出て来てモメてさー。ムカつくから家族ごとしばいたった。」


「………。」


「なんや?」


「な、なんでもありません…。」


慎一さんって…慎一さんって……分かってたけど、無茶苦茶だなあ…。
まあ、そゆうとこが好きなんだけど。


「じゃ、俺行くわ。」


「は、はい!お仕事頑張って下さいね!」


私がそう言うと、慎一さんは手を振ってその場を離れた。