「…知らないわよ。パパが勝手に決めた事だもん。私はそれに付き合わされただけ。」


「はあー…まさかお前が署長の娘やと思わんかったわ」


ため息をつき、その場で崩れる。


「……私は、“森川”って聞いてたからなんとなく…分かってた」


「はあ!?断れよ!」


「だって、なんとなく…だもん。
もしそうだったら面白いなーって思ったし!」


こいつ…何考えとんねん。


「…ねえ、あれ…前慎一がファミレスで食事してた女の子じゃない?」


「はっ!?」


S女が指さした方向には、着物姿の千代子がいた。
池の近くで、ただぼうっと突っ立っていた。


「あいつ…こんなとこで何しとんねん」


「お見合いじゃない?」


そう言われて、そうかもしれないと思った。


「あれー?あんた達、付き合ってるんじゃないの?」


S女が面白そうに言う。
千代子は、大金持ちのお嬢様。多分、親に言われてお見合いでもしたんだろう。


「でも、アイツ…まだ学生なのに」




ザワザワと、胸の中で何かが騒ぎ出した。