ビターチョコレート

「美味しいですか？」


と、聞いてきた。


「…んー。鼻詰ってるから味あんま分からんけど、食感はええわ」


そう言うと、ニコニコと笑い出した。
そして、千代子は俺の使っていたスプーンを奪って、こう言った。


「はい、慎一さん！アーン！！」


…コイツは、何を言い出すねん！


「はあ！？自分で食えるわ！」


「いいじゃないですかー！新婚ごっこです！」


「そんなもんは、どっかのアホとしてこい！」


「えー。慎一さんとがいいですー」


「あーはいはい、分かったよ！」


負けて、千代子の差し出したスプーンをくわえる。


「キャー！」


千代子が叫びだす。俺はスプーンから口を離し、飲み込んだ。


「なんやねん！」


「本当に食べてくれたー」


「いちいちそんなんで喜ぶな！疲れるわ！」


そう言って、俺は笑った。
ほんまに、コイツは単純やな。と思った。




でも、俺は千代子のそういうとこが…好き、なんやと思う。



おかゆを食べ終わった後、薬を飲んで布団に入った。


「悪いな、もう大丈夫やから。」


「そうですか？じゃ、なんかあったら呼んでくださいね」


「おお、ありがと」


そう言うと、千代子は何故か顔を赤らめた。そして、


「お邪魔しました！」


と言って、帰っていった。



「ほんま…ありがと」


そう呟いて、眠りについた。