愛は要らない



手を振る遥を見送って、綾野は読みかけの本に手を伸ばした




高級車ではなく、公共の交通機関に乗ったのは、久しぶりな気がする


「綾野~。こっち、こっち!」


揺れるショートヘアーが梨華だと、綾野はすぐには気づけなかった


「髪、切ったのね」

「そうなの。今の彼が、ショートの方が好きだから」


どう?どう?という梨華に、綾野は苦笑い


「それにしても、綾野が結婚したなんて、未だに信じらんない」