愛は要らない



綾野は一瞬だけ、眉間にシワを寄せた


「失礼します」


ドアが閉まると、結子のお辞儀も見えなくなった


「エルメスの香水、ね・・・」


笑いながら、綾野は呟いた




表に待っていた車に乗り込む際、来たときも止まっていた車に視線を移す


(見合い相手の・・・。篠宮、さん・・・?)


向けられる視線から感じるのは、純粋な嫉妬と愛だった


(まさしく【女】ね・・・)


薫子に笑いかけて、綾野は車に乗り込んだ