愛は要らない



その言葉と同時に、綾野が部屋に入ってくる


人妻というより、年頃の女の子の出で立ちは、専務室では異様だ


「やぁ、綾野」

「・・・来客がいるのなら、私は後で構いません」


綾野が薫子の存在に気づき、出ていこうとする


「構わないよ。彼女はもう、帰るから」

「遥さま・・・っ」

「薫子さん、妻に勝る女性なんて、いませんよ?」


遥の笑顔におされて、薫子はソファーから立ち上がる


「・・・・・・失礼しますわっ」


今にも泣きそうな、そんな表情だった