愛は要らない



綾野がいなければ、遥と結婚していたのは、彼女のはずだった


「こんな場所まで、わざわざすみません」


遥が笑いかけると、薫子は暗い表情をする


「・・・わたくし、理解できませんわ」

「・・・・・・?」


コーヒーを飲みながら、遥は首を傾げる


「奥様のことです。何故、あのような方を・・・」

「愛しているからですよ、薫子さん」


薫子の手が、ハンカチを力強く握りしめる


「あの方の、どこが・・・っ」