「ちーっす。」

昨日買い取った
アルバムの入った箱を肩に担ぎ
事務所の扉を開けた。


「志央、時間、間違った?
随分早いな。」

マネージャが、荷物を
受取ながらいう。

「藤木さんってば、
嫌味な奴だな。
ギリギリなだけで、
遅刻はしてないでしょ。
で、スタジオ空いてる?
アナログ盤聞きたいんだ。」

「あれ?単品(ステレオ)
買った時に、
組まなかったのか?」

「あるけどね。
ここんところ、使ってなくて
針、飛ばしたまま、
カートリッジ交換すんの
忘れてたんだ。」

「ああ、なるほどな。
Aスタ使っていいよ。
日向、いつも来るの早いから、
前、開けてあるんだ。」

そういいながら、
扉を開けてくれた。

「しっかし、重いな。
何枚入ってんの?」

「ん?いっぱい。」

にんまり笑って、
箱を受け取った。


カーペットの上にあぐらをかき
一枚ずつ、ジャケットを
眺めていく。


知ってるアーティストと、
知らないモノと、別けて置いて
山を作ってゆく。



三分もしないうちに、
作業に没頭していた。




「志央・・・?おまえ、
なにやってんの?」