「山本、いいよ。
帰りついでに、俺が送る。」

車のキーを探す背中に声をかけ
自分の上着を手にした。

「じゃあ、頼むかな。
明日18時からだから、
おくれんなよ。

また、元田さんのラリアート
喰らっても助けねーかんな。」

音合わせの時間の
念押しが入った。

「わかってるよ。
しっかし、あのオヤジは
ギタリスト、クビになっても
食っていけるよなあ・・・。」

前に日付を間違えて、
穴を空けて、怒られた時の事を
思い出した。


「サラ、いくよ。」

手をつなごうと、
手をのばす。

「ごめんね。ありがとう。」

彼女は、すっと
ポケットに手を入れて、
俺に背を向け、
玄関へと歩き出した。


えっ?!
かわされた・・・


偶然か?

いや・・コイツなら、
有り得る!


頭の中で、
プチッという音がした。


調子に乗りやがって


ゆっくりと、
玄関の扉がしまって、
二人に戻る。

「ほら、歩けよ。」

サラの肩を押す。

「痛いよ!」

彼女は文句をいいながらも、
歩きだした。