『縛』

暴れる気力もなくし、
私は、降車すら諦め、
電話がおわるのを待つ。


『サラ?サラなら、今、
一緒にいるよ。』

え・・・?
私の事?


会話の内容に、違和感を持った。

この子、誰と話してるの?


振り向いた私に、彼は、
ニッと、笑みをむけた。


「佐伯美穂。知ってんだろ?
俺の従兄弟。
気分転換に、行ってみる?
美穂んち。
あいつも、来ないか?って、
言ってるし。どう?」

今日の休憩時間の、
佐伯さんを思い出した。


こんなに会話が、
途切れない様に話すんだ・・。

こんな、笑うんだって、
正直驚いた。

ホントに、楽しそうに
笑っていて・・・。


それと同時に、
入社してから、今まで、
寂しかっただろうなって、
思ったんだ。


だから・・・

「いく・・・。」

私は、そう、
素直に言えた。


「了解。」

彼は、何とも言えないような
柔らかい笑みを浮かべて、
そういった。