「二時か・・・」


玄関の扉をなるだけ
静かにあける。

電子錠だから、
気を使ってみても深
夜の空間に、容赦なく
施錠の音がひびく。

その乱暴なほど
無情に響く音に
眉間にシワを寄せた。


最近、ずっとこの時間に
帰宅している。

サラと、一緒に住むように
なったのに、会えない日が
続いて、何とも言えない。



「あれ?」



サラの靴がない?


下駄箱とか、
他の部屋も使っていいのに、
彼女は使わない。


一般的な間取りの部屋に
結構な量の身の回り品を、
うまくなおしてしまう。

かといって、
平日は、靴まで
なおさないんだよな。


不審に思って
彼女の部屋を覗きにいく。

ノックをするか迷ったが
そのまま扉をそっとあけた。


「・・・・・」


サラが、いない。


呼吸すらできなかった。
口元を手で覆って、
しばし立ち尽くす。


完全に思考は停止して
やるべき事の整理が
つかない。


サラの交遊関係なんて
美穂以外に見当もつかない。



誰が情報を知ってる?



思いつかないまま
部屋を飛び出していた。