廊下に響くヒールの靴音が
小さく遠ざかっていく。


美穂は、用件を済ませ、
珍しく約束があるからと
あわてて帰って行った。

山本も、そろそろ録りを終え、
スタジオから出てくる時間だ。


いつもなら待ってるって
いいそうなのに。


ほんと、珍しい事もある。



美穂が、慌ただしく部屋を出て
直ぐメールが着信した。


他の携帯電話には、
ロクに読みもしない
膨大な量のソレが来ていたが、
こっちの携帯は、
仕事関係者が主となるせいか、
直接会話する事が多く、
メールなんて珍しい事だ。


「誰だ?」

相手だけ確認する。


サラ?!


慌てて開封すると、
そこには一行、


『ごめんなさい』

と、だけ、


入っていた。