『サラ、
お前、寝室行ってろ。』

真っ青になった私に、
志央が、指示する。

『うん・・・。』

私は、
言われたとおりにした。


・・・ボコボコに
されなきゃいいけど。


ベッドに掛けて、
耳をすませていたけど、
悲鳴やら争うような声は
聞こえてこなかった。


防音効果なんだろうか?




だから、


あの時、

あんなこと

しなきゃよかったんだよ。


お兄ちゃんを
挑発するようなこと・・・



結局、昨晩・・・
正確には、
日付は今日だけど


眠ってから、目覚めるまで、
志央は本当に、
触れてくることもなく、
朝を迎えた。


寝坊気味の私たちを、
起こしたのは、
お兄ちゃんからの電話だった。



「お兄ちゃん?
どうしたの?」

小声ででた私に、
予定の変更を告げられる。


「今から、うちに来るって?!
お兄ちゃんがきたら
目立つじゃない。
私がホテルに行くから。」


部屋には、
今すぐには戻れない。

何とか説得を試みた。


「サラ、電話貸して。」

スピーカを、
押し当てている耳と反対側に、
志央はささやきかけ、
無理矢理携帯電話を、
もぎとった。