「行って来ます。」

「うん。気をつけて。」



そう言った私にニコリと笑い返すと一成さんは家を出て行った。
バタン、とドアが閉まり
部屋が急にしん、となる。

あぁ、そうか。
私初めて一人っきりになったんだ。

今まで一成さんが座っていたソファーに腰を下ろすと
ほんのりと温もりだけが残っていた。

一成さんは私に言えないことがあって
それはきっと
一成さんのお仕事なんだと思う。

多分一成さんはお母さんの部下じゃない。
お母さんの会社はこんな時間に出勤するはずがないから。

そこまで分かっていても
一成さんの事を信じようとする自分が居た。



「一成さん…貴方は何者なの?」



誰にともなく呟いて
私はケータイを見つめた。

強引に交換させられた一成さんのアドレスと番号。
私がそれをじっと見つめている時
一通のメールが届いた。