「え? 俺、泣いてる?」 啓汰は、顔を上げて、手で自分の頬を触る 「あ、本当だ… 気づかなかった…」 …啓汰? いつもと何か違う こいつは、何があっても泣かない奴だと思ってた 実際、啓汰が泣くのを見るのはこれが初めてだ 「なぁ、俺どうすればいい?」 俺達二人以外、誰もいない風呂の中で啓汰の声が響く 「…俺…俺! 何にも考えてなか…っ!」 啓汰の嗚咽が聞こえる 俺は驚きで声が出ない 「俺っ! 昇さんみたいな思いしたくないっ!! どうしよう!!」