そしてサヨ自身は、自分の身体になぜ発作が起きているか戸惑っているみたいで、余計に動揺していたみたいだ。

だから、誰にもその発作の理由が解らない。サヨ自身にも…。

「ヒサジ君の名前にサヨちゃんの体が反応しているのは間違いない。でもサヨちゃん自身が発作の理由を解っていないから、原因もはっきりとしないの…そこで、ヒサジ君とサヨちゃんが再会すれば、何か進展があると思ったんだけど…」

「今のところ何も進展はないですね…しかも、サヨは俺の事を何も覚えてはいなかった。正直意味が解らないですよ…」

カズヤや柏木先生の話を聞く限りじゃ、サヨは俺の話を聞くたびに、変な発作を起こしていたらしい。でも、サヨは俺の存在を完全に忘れていた…じゃあ何にサヨの心は反応したんだ?

「私も少し期待が外れているのよ…。サヨちゃんは、ヒサジ君の『名前』にはちゃんと反応していたのよ?でも『顔』は知らなかったみたいなのよね…」

名前は知っているのに、顔は解らない…そんな事があるのか?それよりも、気になる事がある。

「カズヤはどうだったんですか?カズヤの顔と名前も覚えていたんですか?」

「カズヤ君の事?カズヤ君もヒサジ君と同じよ?顔は知らなかったけど、名前は覚えていたみたい…」

俺と同じか…顔は知らない。でも、名前には覚えがある。と言う事は…。

「完全には記憶を失っている訳ではないんだな…少しではあるが、昔の記憶はあるんだ」