柔らかい日差しが降り注ぐ中、軽い身のこなしで人混みをかわして進む。
こうした場面でも、盗賊としてのスキルが役に立つ。
少し皮肉な気はするが、身に付いた動きなので仕方がない。
街の人々に軽く挨拶しながら着々と仕事をこなす。
配達物の半分以上を配り終わり、ちょうど昼時に差し掛かった。
天気が良く、風も穏やかだったので、このまま外で昼食を取ることにした。
街外れの小高い丘の芝生に寝そべる。
青空に白く流れる雲は見てると心が安らぐ。
(飯食い終わったら、このまま昼寝してもいいかも…)
そんなことをぼんやり考える。
「いいお天気ですねぇ〜」
少々間延びした声が掛けられた。
ドルメックの目が鋭く光る。
先程までの弛んだ雰囲気は一切消え去っていた。
「……日中は声を掛けるなと言ったはずだ。何しに来た?」
低く鋭く、声の主に吐き捨てる。
言われたほうは相も変わらず間延びした声で続ける。
「そんなこと言ったってダンナ〜、[夜の顔]になってますぜぇ〜」
そう言って近寄って、隣に腰掛けた。
帽子を目深に被り、地味で目立たない服装の糸目の男である。
身を起こし、視線は前方に向けたまま、もう一度言う。
「何しに来た?情報屋…」