キミの笑った顔。


泣いた後の顔。


不意に見せる切なげな顔。



僕はもっとキミを知りたい、と思った。



最初に笑った顔を見たのは、入学式の時。


出席番号順で席に座る時、たまたまキミの隣に座った。


自分の席の近くに、同じ中学校出身の生徒が居なくて、人見知りする僕は少し気分が沈んでいた。



「あの、生徒手帳落としましたよ」


不意に左側から声をかけられ、顔を左隣に向ける。


「……」


思わず隣に座っていたキミをジロジロと見てしまった。



肩より少し下の、茶色が交ざった黒髪。


肌の色はどちらかと言うと小麦色。

前髪を左右に分けて、二重の大きな目が僕を見つめる。



その目は充血していて、唇は微かに震えていた。


キミは困った顔をしながら、生徒手帳をオレに差し出した。


「なんか顔についてるかなぁ?」


キミの声が耳に入り、オレは慌てて生徒手帳を受け取った。



「ううん、何もついてないです。ありがとう」


キミから受け取った生徒手帳は、先程先生が配ったものだった。


するとキミはクスリと笑って、


「名前なんて言うの?」


と聞いて来た。


「師中出身の秋原雪斗です。あなたは?」


「私は久間中出身の瀬戸大河だよ」


瀬戸……大河。


「あ、これからよろしくねッ。後、敬語じゃなくてい-よ♪」


キミはそう言ってまたオレに微笑んだ。



その優しい微笑みを見て、さっきまで沈んでいた気持ちが舞い上がった。


キミ……じゃなかった。


瀬戸さんを初めて見た時、何かが引っ掛かった。


その何かは分からないけど。





その日からオレと瀬戸さんは仲が良くなり、オレはどんどん瀬戸さんに惹かれていった。

生徒手帳を拾ってくれた時の感じとは違い、彼女は少し変わっていた。