閉店後に着替えて出てきた柴田さんは、洒落っけがない。



Tシャツに細身のパンツ、スニーカー。



若いのに、お洒落に興味ないのか。



「お疲れさまでした」

「あっ、お疲れさまでした。親切にしてくださってありがとうございます」

「えっ?普通でしょ」

「ははっ、いい人だ」



帰り道が同じだった。



原チャリを押す俺と、チャリを押す柴田さん。



「女に歳聞くのダメとか言うけど、実際いくつ?」

「21になったばっかりで」

「マジで!?タメじゃん!!敬語やめてよ」

「もっと若いかと思った」

「童顔?」

「元気だから」



はははっ!!



よく言われる。



空元気のはずが、いつの間にか俺のキャラに定着していて。



元気で明るいとか、よく言われる。



「でも、人間の中身なんていつも元気じゃないよね」

「えっ?」

「しんどいとか、苦しいって、表に出せない時あるし」

「そう…だね…」

「そういうの、どこで出せばいいか知ってる?」

「知らない」

「あたしもわからない」



距離が一瞬、近くなった気がした。