なんだか聞いてもらいたかった。



誰でもよかった。



「俺がここ来た理由って知ってる~?」

「知りたくもねぇ」

「女なんだよね、実は。中学ん時、マジで好きになっちゃって。相手に彼氏もいたんだけど、関係ねぇってくらいハマったんだ」

「…………」

「ソレが彼氏にバレた時、俺がムリヤリその女を…ってのが彼女の言い訳」

「その程度、別にお前が家出されることじゃねぇだろ」

「ソレ、兄貴の女。今は義理のオネーチャン。結婚オメデトーって感じ?」



俺は兄貴の彼女に手をだした最低な弟で。



マジメな両親と、出来のいい兄貴。



居場所なんかあるわけもなく、たどり着いたのはここ。



だから女はもう懲り懲り。



「引きずってんのかな、俺」

「知るか。猫返せ」

「ん…」



聞いてもらえて、少しだけ楽になった。



何も語らなかったケントに初めて感謝した瞬間。



なんでこんな昔話思い出したんだろ。



俺は…何がしたいんだ。