ずっと悩み苦しんでいたことに光が射した気がした。



「杏里、俺、ベースの才能はないみたいだ」

「はい…?」

「ガキの頃から、サッカーしか頭にねぇや!!」

「なんなの?急に楽しそうにしちゃって~」



また始めてみる。



もう、プロなんか目指さない。



自分がやりたいことに、正面から向き合うことにする!!



「千里、尚道、ご飯の時間だから帰るよ」

「「もうちょっと!!」」

「…………ご飯です!!今度はもっと明るい時にやりなさい!!」

「「はぁい…」」



海に行くのはやめてもいい?



また千里くんとサッカーがしたい。



「サッカー楽しいね~!!」

「またやろうな!!」

「うん!!」



呆れた顔の杏里が、ため息をつき、千里くんの手を握った。



ふと目が合い、いつもよりカワイイ杏里が笑う。



「尚道のカッコイイ姿、初めて見た~」

「申し訳ない、いつもヘタレで」

「そんな尚道だからいいのかもね」



この日、杏里は俺の大事な人ってポジションを安易に奪い取ってくれた。