【尚道】



小さい頃から夢があった。



サッカー選手になって、世界を相手に戦う自分を日々想像していて。



注目を浴びたジュニア時代、高校に入る前には、プロから声がかかっていた。



小さかった俺は毎回日本代表として呼ばれ、何度も新聞に載ったり。



「尚道~、ホール出れっか!?」

「出れます!!」

「悪い、少し頼む!!」



居酒屋でキッチン担当の俺。



大好きだったサッカーは、もうできない。



「お待たせしました、鶏唐です」

「お兄さんイケメ~ン!!」

「そんなことないですよ~。空いてる皿、下げますね」



何かしてなきゃ、自分がダメになりそうで。



諦めきれない夢と、消化しきれない現実。



サッカーができなくなり、暗い周りの態度がいやだった。



明るく、明るく、明るく。



笑って大丈夫って言っとく。



気にしてない、仕方ない。



口ではいくらでも言えることは、心にウソをつく。