「なんて馬鹿な父親なんだ。ユキに、父親らしいことを何もしたことがない。・・・いつも泣かせてばかりいた。やり直せるものなら、もう一度あの子が産まれた時から、やり直したい。あの子に幸せな子供時代を過ごさせてやりたかった・・・。」

お酒って怖いと思った。

まるで、別人になるんだもんな。

でも、今、僕の目の前にいるお父さんの涙は嘘じゃない。


「今からでも遅くないです。ユキさんの体の傷を見ましたか?あの傷を見たら、おじさんは変われるはずです。」

ユキのお父さんは、ハッとした顔をした。

「ユキの体の傷、残っているのか。・・・本当に悪いことをした。最低の父親だ。」

「でも、たった一人のお父さんです・・。」


涙をハンカチでぬぐったユキのお父さんは、いすに座りなおした。

「私は、自分の地位や名誉を守ろうとしてきた。そして、大事な家族を失った。もっと、早くに決心していれば良かったんだ。今日、君に会えて良かったよ。君と話して、やっと気持ちが固まったよ。私は、施設に入ることにするよ。」

「施設・・って?」

「アルコール依存症の更正施設だ。何年か前にも考えたことはあったんだがね。仕事を捨てて、世間から白い目で見られる事が怖かった。でも、自分の愛する家族を犠牲にしてきたんだね。もう遅いかも知れないが、家族の為に私は、一からやり直すことにするよ。」

優しい微笑み、低い声、どこから見ても素敵な人。


あなたなら、立ち直れます。

頑張ってください。