「昨日ユキが家に帰って来てくれてね。いつも私を避けていたあの子が、私の部屋に来て、リハビリの本や、けがから立ち直った人々の本を見ていたよ。そして、君の事を話してくれた。今日の昼から君のお見舞いに行くと言ってたから、急いで朝に来たんだ。私が来たことを、ユキには黙っててもらえるかな。あの子には嫌われているからな。よけいな事しないでって言われちゃいそうだから。」

寂しそうな目をしてる。

「それは、違います。ユキさんはお父さんの事、嫌ってなんかないです。いつもユキさんは言ってました。昔みたいに四人でどこか出かけたいって。」

「本当にユキがそんなことを・・・。あの子は私に何も話してくれなくなったから、そんな風に思ってくれてたなんてな。最近は、どう接していいかもわからなかったよ。」

おでこをポリポリとかくお父さんはとても寂しそうにそう言った。

僕は、ユキのお父さんを憎いと思ってた。


でも、そんな気持ちどっか行っちゃった。


まだ信じられない。


こんな優しい目をした人が、ユキに暴力を・・・?



「ユキさんは、お金なんていらないって言ってました。お父さんに名前を呼んでもらいたい、一緒に御飯を食べたいだけだって・・。
昨日の夜も、お父さんがお酒飲んでなくて優しいってうれしそうに電話してきてくれました。」


突然、ユキのお父さんは、泣き崩れた。

大きな体が震えている。

体中で泣いている。