この胸の鼓動・・・どくんどくんどっくんどっくん・・

恋をすると自分の周りの世界がこんなにも変わるとは知らなかった。


10月になり、文化委員になろうと、山田に誘われた。

「やだよ~めんどくさい。放課後も委員会とかあるんだろ?バイトもあるしパスパス!」

断り下手な僕にしては頑張って断ったが、山田が引き下がるわけがない。

「文化祭って思い出になるんだよ~。大物歌手とか呼んじゃったりしてさ。上級生とも仲良くなれるし出会いのチャンスもあるんだよ~!」

しつこく僕の机から離れない山田だが、彼女は本気で僕が好きなわけではないだろう。

勝手な解釈だけど、たまたま少し仲の良いクラスメイトに恋心抱いてるだけ。

あまりの勧誘に、少しイラついた僕は、席を立とうとした。

そのときの僕の脳裏によぎった事。

それは、少しでも目立って僕の恋を前進させたいってこと。

あの朝、下駄箱で僕に微笑みかけてくれた春瀬さんに、僕は何も言えないまま立ちすくんでいた。

きっと顔は真っ赤だったと思う。

何か言わなきゃって思っているうちに、春瀬さんの親友らしきユミちゃんって子が来たんだ。

そのまま、僕らは目をそらした。

気のせいかも知れないけど、あの日から何度か廊下で目が合っているような気がする。

自分がこんなに意気地なしだとはがっかりだ。

運命の相手だなんて大げさに言ってるくせに、あんなチャンスを物にできなかった。

それからだって、話すチャンスはなかったわけじゃない。

せっかく名前を覚えててくれたんだから喋りかければいいのに。

春瀬さんは優しくて、思いやりのあるお嬢さんなんだから、僕が話しかけても絶対笑顔で話してくれるってわかってるのに。