「この~~!
 守のエッチ!
 お莫迦~~!
 やっぱり、いっぺん死んでこい!」

 怒った晴香の、振りまわした手を。

 間一髪でかわして、守は、困ったようにクビをかしげた。

「ええっ!
 なんで~~?
 ど~~して、そこで怒るかなぁ?」

「知らないわよ、すけべ!」

 ……。

 どうやら、晴香の病気もたいしたことがなさそうだ。

 婚約指輪を尻のポケットに入れてた事をすっかり忘れ。

 晴香の鉄拳をかわしながら、どうやったら、彼女の怒りがとけるのか。

 守は、必死に考えていた。




 二人の、犬も食わない莫迦莫迦しい争いは。

 額に太い青筋を立てた看護師さんが、病室に飛び込んでくるまで、続く。

 今年は、多少雪が降っても。

 二人で、暖かく過ごせそうだった。




   <了>

 H21.11.22.17:48
 (書き下ろし)