「誰にも渡したくなかった。ずっと俺のもんでおれって思いよった。再会して、お前に…付き合っちょる奴がおるって知った時も…あんな冷静ぶっとったけど、内心…すげぇ、苦しかった。ふざけんなやっち思った。見たこともないお前の彼氏を…心ん底からぶん殴りたかった。…全部俺のエゴじゃ」

笑っていたヒカルは、そこまで言うとふと真剣な顔になり、あたしの腕に手を伸ばす。
ぐっと力が入ったかと思うと同時に、あたしは簡単に引き上げられた。

立ち上がり、目線がさっきより随分近くなる。
ヒカルの力強いあの視線が、あたしを捕らえる。

苦しい。

「謝るんは俺の方じゃ。あん時…お前に別れを言わんかった。どんな形であれ、お前に別れは言わんって…すげぇずるい形で繋ぎ止めた。そう言ったらあおは絶対拒まんっちわかっとったけぇ。純粋に友達でおれるなら言えばよかったのに…そんな気、これっぽっちもなかったのに、そんなん言うべきやなかった。就職も…好きにせぇっち言っときながら、内心、好きにせぇなんて思ってなかった。でもそれを言う資格は俺にはない。わかっちょって…お前を、手放さんかった」

「じゃけぇ、」そう言って、ゆっくり、あたしの腕を掴んでいた手を放した。

掴まれていた場所がすっと冷える。
一瞬、ヒカルが遠くなって、胸が締め付けられた。