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昼間よりは多少涼しくはなったが、それでもショーパンから伸びる足に感じる空気は生ぬるかった。

懐かしい、歩き慣れた小学校までの坂道。六年間、有希と毎日登ったっけ。

サンダルの底が砂利を踏む音が、静かな夜に響いていた。
あたしはそれを一歩一歩聞きながら、ただ真っ直ぐ校門へと向かう。

坂を登りきった所で曲がると、もうそこは小学校だ。
視線を足元に落としたまま曲がり、ゆっくりと顔を上げた。

校門の近くの街灯。
そこに背と片足を預け、俯く横顔に胸が熱くなる。

足音に気付いて顔を上げたその視線と、あたしの視線がぶつかる。
街灯の灯りの下、ヒカルは優しく微笑んだ。

「よぉ、」

『よぉ』って、軽いやろ。

あたしは気が抜けて、思わず頬の筋肉が緩む。
少なからず感じていた緊張が、ゆっくりと溶けだした。

「まだおったんじゃね」
「仕事、来週からじゃけぇ。たまにはのんびり地元おってもえぇかと思っての」

ヒカルは預けていた片足で街灯を蹴って、真っ直ぐと立つ。
ここに二人通っていた時より、随分ある身長差。