「卒業式の前、母親の地元に引っ越した。適当なアパート借りて、春から働き出した。近くの工場やらコンビニやら…まぁ、転々と」
「…高校は?」
「行ってないわ。金もないし…まぁ、あの頃の俺じゃどのみち行けんじゃったじゃろ」

ヒカルは笑って言ったが、あたしは笑えなかった。

中学と同じくらい、高校にも沢山思い出はある。

でもヒカルには、それがない。

あたしが安穏と高校生活を送っていた間、ヒカルはどんな思いで日々を過ごしていたのだろう。

心が、苦しい。

「早く家、出たかったんよ。もう誰にも振り回されたくなかった。自分だけで生活できる様になりたかった。バイトでためた金使って、ようやく去年、アパート出て…今は工場で働きながら、大阪で独り暮らししよるわ」
「そうやったん…」

ヒカルがひとつ話す度、二人の空白が埋まっていく気がした。

伸びた背や、広くなった肩幅。
筋ばった手のひらが、ヒカルの今までを物語っているようで。

時間の流れを、感じずにはいられなかった。