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――ヒカルが家に来た日は、今でもよく覚えている。
「何け、勉強しよったんけ」
ノックも無しにドアを開け部屋に入ってきたヒカルに、俺は正直驚いた。
ノックが無かったことに対してではなく、ヒカルが家に来たことに驚いたのだ。
「秀則もう高校決まったんじゃないんけ?」
「…課題とか、あるから」
「ほうけ」
それだけ言うと、部屋の真ん中にドサッと腰を下ろした。
俺は椅子を回して、ヒカルの方を向く。
「…どうしたの?」
「何が」
「ヒカルが家に来るなんて、珍しいから」
「そうかの」、軽く笑い、ズボンのポッケに手を突っ込む。
何かを探しあて、無造作にその手を俺の方に差し出した。
「ん」
「…何?」
「卒業式の日に、あおに渡して」
ヒカルの手にあったのは、白い小さい紙。ヒカルらしい不揃いな折り目だった。
俺は益々不思議に思い、眼鏡を外した。
「何で?自分で渡しなよ」
「忘れたんか?俺はもうあおとは別れたんじゃ」
「忘れたとかじゃなくて…卒業式くらい、ヒカルも行くんだろ?」
そう訊く俺の方を一瞬向き、ヒカルはその手を下ろした。
床に投げ出した足の先を見つめる。



