狭い廊下は何故だかとても広い。
迷いこんだ花びらが、小さく舞って、空へ消える。
ヒカルが笑っていた。
記憶の中の、ヒカルが。
「…いるわけない、か」
誰もいない廊下を見て、自嘲的に笑う。
そのまま足を進めて、いつも座っていた辺りで止まった。
…何、期待してたんだろう。
そんなつもりは全くなかったのに、ここに来た瞬間、ヒカルがいるような気がしていた。
ここへ来ればヒカルに会える。
何の根拠もないのに、あたしの中にあったジンクスの様な願い。
バカみたい。
今更ヒカルに会ってどうするんだ。
手を離したのも、諦めたのも、全部あたしなのに。
小さくため息をついて、渡り廊下から外を臨んだ。
満開とまではいかない桜が控えめに咲いている。その下にちらほらと見える生徒達。
ぼんやりと眺めていたその中に、ふと違う制服を見つけた。
瞬間、心臓が跳ねた。
思考回路と足と、どちらが速く動き出しただろう。
あたしは迷いもせず、その場から駆け出した。
卒業するためにこの場所に来た。なのにまだ、つながりを求めていた。
そのことに今更、気付いた。



