不意にさとの肩が震えた。
同時に耳に届く、カタンという小さな音。

瞬間、泣くのを止めた。

顔を上げる。さとの驚いた表情が視界に入る。

思考回路が、一瞬にして繋がる。


「…垣」


さとの声を聞いたのと、あたしが振り向いたのは、どちらが先だっただろう。

夕焼けのせいか、はっきりと顔は見えない。
それでもあたしが見間違えるはずがない。

ゆっくりと振り向いたあたしの瞳に映るのは、紛れもなく。


「ヒカ…ル」


…ヒカルだ。

ヒカルだった。

教室のドアの隣、泣き崩れるあたしを見つめる瞳は、ずっと押し寄せていた衝動を揺さぶるもの。

あたしの頬に一筋涙が伝ったのは、会えたからじゃない。

目の前にいるヒカルが、ヒカルの持つ威力が、何一つ幻影じゃなかったから。