さとが目を見開いたのがわかった。同時にあたしの頬に、冷たい筋が通る。

「ねぇさと。何でヒカルはおらんの?」
「あお…」
「何で?ヒカルはあたしが辛いときいっつもおってくれたのに、何で今おらんの?」

まるで何かの線が切れたかの様に、あたしの涙は止まらなかった。
涙だけじゃない。防波堤が壊れたあたしには、もう波は押し寄せるしかなかった。

「もうやだよ。あたしいつまで我慢せんにゃいけんの?いつまで耐えたらこれは終わるん?いつまで待ったらヒカルは来てくれるん?」
「あお、落ち着け…」
「ヒカルはおらんじゃんっ!全然側におってくれんじゃんっ!あたしの不安取り除いてくれるのは、ヒカルしかおらんのにっ!助けてくれるのは、ヒカルしかおらんのにっ!!」

自分が何を言っているのかわからなかった。
それでもただ、さとの胸を叩きながら叫ぶ。

そんなあたしの声は、時間の止まった教室に響いた。

くしゃくしゃの顔のまま、さとの胸に頭を埋める。


「ヒカルしかおらんのに…っ」


…ヒカルしかいない。

あたしを救ってくれるのは。

あたしを満たしてくれるのは。

あたしが何よりも求めているのは。


ヒカルだけなのに。