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二階の渡り廊下から眺める景色は、どこか懐かしい気がしていた。
「なんか制服に着られちょる感じじゃね」
隣であたしと同じように下を覗き込む綾が、面白そうに言った。
春休みに染め直した髪が、サラッと綺麗になびく。
「去年のうちらもあんなんじゃったよ」
「そっかなー?あおはそんなことなかったよ」
「いや、膝丈スカートが居心地悪かったもん」
今では随分短くなったスカートを二人で見て、ぷっとお互い吹き出した。
残念ながら今年は雨で桜が散ってしまっていたが、アスファルトに張り付いたピンクの上を、新入生達が緊張した面持ちで歩く。
入学してからもう一年もたったんだ。
感慨深いというよりも、その速さに正直戸惑っていた。
「でもクラス離れてショックじゃわ」
手すりに頬杖をつき、綾が小さくため息をつく。
「さとと?」
「神ちゃんは隣じゃけええよ。あおは校舎から違うしさぁ」
「あたしも嫌っちゃ。由利も香緒も違うし。綾は一緒じゃ」
「まぁそうじゃけど…」
「あおと一緒がよかったわ」、そう言ってくれることは、素直に嬉しかった。