あたしの髪を、そっとすくう。いつかの夜の海の記憶が蘇り、色んな意味で胸が苦しくなる。

「…女なんじゃな、あおは」

その時の垣枝の表情を、あたしはどう表現したらいいのだろう。
落とした視線が見つめる先は、あたしの染まった髪の端。
哀しいのか、寂しいのか、わからない。

「…変わらんよ」

あたしはその表情を見て、呟く。


「あたしは何も変わらんよ」


世界は移り変わる。
いつまでも同じ位置にはいられない。

でも、変わらないものもある。
一度は諦めたけど、でも今、確かに感じてる。

垣枝に感じる、この想い。

胸が焼ける様な、この衝動。

押し寄せて引かない、この欲望。

…変わらない。

あたし、垣枝が欲しい。


垣枝が視線を上げた。
再びかち合う二人の視線。
そらすことのできない、引力が働く。

垣枝が、呟いた。

「言っていい?」
「え?」
「俺のもんでおって」

その言葉は、何の前触れもなくあたしに届いた。
理解する前に、垣枝が続ける。


「俺のもんでおってぇや、あお」