「それ、そんな悪いことけ?」


黙っていた垣枝が、口を開いた。

視線を上げて、垣枝の横顔を見つめる。

「俺はそれ、正当じゃと思うけど。相手を見返してやりたい、じゃから自分が相手より上に立ちたい、それって人間の当たり前の心理じゃあや。やられたからやり返すって方法より、ずっと綺麗じゃと思うけど」

「そういう方法取る奴が、多いけぇの」、そう呟いた垣枝の横顔からは、どうしても心情が読み取れない。

でもただ強く、言ってくれた。


「あおは汚くなんかないわ。少なくとも俺から見たあおは、間違っちょらん」


力強いその一言。
ねぇ垣枝。
その一言が、どれだけあたしを救ってくれたか、あなたはわかってる?

俯いて唇をぎゅっと噛み締めながら、涙を堪えた。


「…あおは、変わったわ」

近くなった声に驚いて顔をあげると、前を見ていた垣枝があたしの方を向いていた。

暗闇の中、二人の目が合う。

苦しい。

「…変わった?」
「変わった。髪型も、雰囲気も、色々」
「そうかな」
「そうじゃ。小学生の頃は、スカートなんかはきよらんかったじゃ。でも今は、制服着ちょる。それが似合っちょる」