……………

傷ついたのかすら、わからなかった。

みんなの輪から離れ、グラウンドの隅の鉄棒に腰かける。

胸の奥が苦しくて、重くて、取り去りたいのに消えてくれない。

何も考えたくなかった。

何も感じたくなかった。

例えばこの夜の闇も、遠くのみんなの笑い声も、火薬の匂いも、何もかも。

それらを五感で覚えてしまうと、再びそれらを感じる時に、この重苦しい気持ちも思い出してしまうと思ったから。

そう思う所を考えると、やっぱりあたしは傷ついていたんだと思う。


ぼんやりと眺めた夜空には、何一つ見えなかった。


「なんけ、花火もっちょるじゃ」


不意に声が聞こえて首を動かす。見なくても、声の持ち主はわかっていた。


「…垣枝」


垣枝はあたしの横に無遠慮に腰かけ、「ん」と手を差し出す。その手には、束になった線香花火。

「線香花火嫌いなんじゃけどな」
「…じゃあ何で持ってきたんよ」
「もうこれしか残っとらんかったんじゃ」