「あお…ちゃん」

言ったのは、誰だっただろう。
そんなこともう、どうでもよかった。

ドアの前で、ただ立ってみんなを見つめる。
みんなも化石の様に、あたしを見つめ返す。

不意に、あたしは表情を崩した。
それは自分でも、完璧に近い笑顔だったと思う。

「男子が呼んじょるよ。グラウンドで、花火しよって」

落ち着き払ったあたしの声が、固まった空気を溶かす様に響いた。
みんなが徐々に、肩の力を抜くのがわかる。

「あ…、うん。じ、じゃ、行こっか」
「そ…だね。わざわざ、ありがとね」

少しずつみんなが笑顔を取り戻す。あたしはそれを見ながら、ああ、こうやって仮面を被るんだと思う。

騙されるあたしも、バカだけど。

でも。

「あ、そだ」

あたしの一言に、みんなが再び固まった。
机から降りたみんなの視線が向く。


でもあたしは、生憎被る仮面を持ってないんだ。


「男友達が多いんは、別に意図的なもんじゃないけぇ。男子の方が気が合うだけ。男子は夜の音楽室で、こそこそ人の悪口言ったりせんしね」

笑顔で続ける。
あたしとは正反対に、みんなの表情がひきつる。