この町に、国のおエライさんが来たときの話。

その日は町中がピリピリしていた。このオエライさん、ひねくれ者で有名だったのさ。もしおエライさんを怒らせるようなことがあったら、町のぼろい駅の建てかえ計画が、お流れになってしまうっていうんで、それはそれは気を使っておエライさんとその奥様をもてなしたんだな。

駅ではみんなで旗をふってお出むかえ。昼は音楽会。午後は町で一番お利口な学校の視察(子どもたちの合唱つき)。夜はパーティー。

そして、町で一番高くて気取ってるホテルにご案内したのさ。

ホテルのろうかにしきつめられた、赤いふかふかのじゅうたんの上を歩きながら、おエライさんはえらく上きげんだったらしい。

「ふん、なかなか素敵なホテルじゃないか」

「そうざますね、あなた」

なんて言いながら、歩いてたんじゃないかな。

おエライさんが泊まる部屋は、ホテルの最上階のデラックス・スイート・ルーム。もちろん、このホテルで一番高い部屋さ。入ったことはないけれど、ベッドルームが二つ、パウダールームも二つ、それにグランドピアノやらギリシャの婦人をかたどったちょうこくなんかもあるらしい。

おエライさんが部屋に入ったとき、そこに何を見たと思う?

そう、我らがノラネーコだんしゃくさ。