小さな好き、


―「なつめちゃん!僕ね、ぼく・・・・」
「ん?なーに?」
「あのね、僕ね――」


遠くから「なつめー」と呼ぶ声が聞こえ、
そこで言葉は途切れる。
そして、夢から現実へと目が覚める。

あの男の子、見たことあるけど誰だっけ?

夢に出てきた小さな男の子。
あたしも小さかった。
多分、保育園くらいだと思う。


「おはよ」
「なつめ?学校、遅れるわよ?」
「あ、うん。すぐ用意する」


祇ノ宮 棗(Shinomiya natume)

春の桜が満開を咲かす季節、
高校生になった。

ぱぱとお母さんと一緒に暮らしているけど、
ぱぱは仕事でほとんど家にいない。
お母さんいわく、K企業の部長とか言ってるが、
実際は違う仕事のことは知っている。

だが、それが何の仕事かは知らない。
だけど大変な仕事だということは分かる。


「いってきます」
「気をつけてね」