私と彼の関係

 だが、彼は動揺もしていなかった。いつものように平然とした顔をしていた。


 頭の中が混乱しながら、それでも必死に整理しようとする。


 緊張なのか、戸惑いなのか、いつの間にか手が震えていた。


「こんなとこで何をするのよ」


「大丈夫だよ。誰もいないし」


 その言葉に反応し、辺りを見渡していた。確かに誰もいない。



 でも、見渡してそうじゃないと気付く。


「何でキス」


「あんまり大声出すと、人に聞かれるよ」


 その耳元で囁かれた言葉に何も言えなくなって口を噤む。