でも、宮野君はそんな私の気持ちに気づくわけもない。


 わかっている。


 だって、その程度の関係なんだから。


 ここで手を引いて、どうしてそんなことを言うのって言えない関係。


 だから私は自分の悲しい気持ちをこらえるために唇を軽く噛んだ。


 水族館の前には子供連れや恋人同士と思われる多くの人がいた。夏休みで、快晴の天気とあればこの人出も無理はないかもしれない。


 そのとき、男の人の腕に抱きつくように絡んでいる女の子が目に映った。


 ああいうことをする勇気は私にはないけど、すごく羨ましかった。


 私がそういうことをしたら、どうするんだろう。


 すごく冷めたことを言われそう。


 宮野君は私の気持ちに気づいた様子はなく、あたりを見渡している。


「券を買ってくるから、待っていて」


 私は彼の言葉に頷いていた。