「心配なんて」


 宮野君がとっさに否定しようとするけど、宮野君のお母さんは動じた様子もなかった。


「分かったから大きな声を出さないでね。私は彼女を送るから、留守番をよろしく」


 言い返せない宮野君は黙ってしまった。


 宮野君の扱いに慣れているなって思った。


 私達は家を出ると、宮野君のお母さんの出してくれた車に乗ることにした。


 車の中で宮野君のお母さんが私を見て、笑顔を浮かべる。


「どうかしましたか?」


「本当に渉はあなたのことが好きなんだなって思って」


「そんなことないですよ」


 だって彼から好きと言われたことなんて一度もなかったから。


 むしろ昨日は迷惑がられていたのに。


 思い出して落ち込んできた。


「渉がののかちゃん以外の子をあそこまで心配するのって始めてみたわ」


 心配って想像もできない。


 あの私を抱きしめてくれたのはだからだったのかな。


 その車は私の家の前で止まる。


 彼女は心配そうに私を見る。


「よかったら、家に泊まる? また夜迎えに来るから」


「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」


 私は彼女にお礼をいい、その場で見送った。


 一日ぶりの家への帰宅だ。


 私は家の中に入ると、ほっと息を吐いた。