「飲み物とか持ってくるから、入っていて。二階に上がって一番奥の部屋」


「え?」


 そう反応した私を不思議そうな目で見る宮野君。


「分からないかな。わかりやすいと思うんだけど」


 そうじゃなくて、ほとんどはじめての家で、人の部屋に入るなんてそんなことはできない。



 彼が階段をあがりかけようとしたとき、チャイムが鳴る。


 宮野君はインターフォンを受けずに玄関を開けていた。


 彼の家の外に立っていたのは綺麗な子だった。


「渉。この本を買ったんだ」


 彼女は嬉しそうに宮野君に本を見せる。


「何だ、それ」


「学校で見て欲しいなって思っていた図鑑。高かったんだよ。さっき買ったの」


 宮野君はそれを受け取ってページを捲っていた。ののかちゃんはそんな彼を嬉しそうに見ていた。